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堕とされた母 佐知子

堕とされた母
-1-
「……まあ、越野くんは、
 日頃の生活態度も真面目ですし」
初老の担任教師が、
慎重に言葉を選びながら続ける。
「そんなことをするような子じゃないってことは、
 私もわかっておるんですが。ただ…」
応接セットの低いテーブルに視線を向ける。
そこには、一箱の煙草と使い捨てのライターが置かれている。
「裕樹くんが、
 これを所持していたことも事実でして…」
「………はい」
対面のソファに腰かけた佐知子は、
固い表情のまま小さく頷いた。
卓上の“証拠品”を一瞥してから、
隣に座った裕樹へと顔を向ける。
「裕樹。どうして、こんなものを持っていたの?」
「………」
「裕樹!」
項垂れたまま、なにも答えず、
顔を向けようともしない息子の姿に
思わず声が高くなった。
まあまあ、と教師にとりなされて、
なんとか気を落ち着ける。
「……あなたが、
 自分で買って持っていたわけじゃないでしょう?
 裕樹が煙草なんか吸わないことは、
 母さん、よくわかってるわ」
教師の手前をつくろったわけではなく。
佐知子は完全に息子の潔白を信じていた。
だからこそ、
本当の理由を釈明してほしかったのだが。
「…………」
裕樹は頑なに下を向いたまま、
肩をすぼめるようにしている。
それは佐知子には、見慣れた態度であった。
幼い頃から、気弱な息子の唯一の抵抗の方法。
「……どうして…」
ため息とともに、そんな言葉を吐き出しながら、
しかし佐知子には薄々事情が洞察できてもいた。
「先生」
佐知子は教師へと向き直ると、
改まった口調で切り出した。
「……あ、は、はい?」
担任教師の返事は、わずかに間があき、
うろたえた様子を見せた。
ついつい、
この美しい母親の横顔や肢体に視線を
這わせてしまっていたのだ。
状況を別にしても、
教職者として不埒なことではあるが、
同情の余地はあった。
受験を控えた中学三年クラスの担任となれば、
生徒の母親に接する機会も多いが。
越野佐知子の容色は、最上等の部類だった。
派手やかではないし、
年不相応に若々しいというわけでもない。
そんな押し付けがましさや不自然さと無縁の、
しっとりと落ち着いた美しさである。
成熟と瑞々しさのバランスが、
中学生の子を持つ年代の女性として、
まさに理想的だと思えるのだ。
さらに、いまの佐知子の服装が問題だった。
紺色の薄手のカーディガンの下は、白衣姿なのだ。
看護婦である佐知子にとっては、
あくまで仕事着だから
おかしな格好というわけではない。
勤務中に学校から連絡を受け、
大急ぎでタクシーで駆けつけたのだ。
それは、担任教師も承知している。
子を思う母心の表れだと理解している。
だが、ナースの制服とは病院以外の場所では、
やはり浮いて見えるし。
妙に……扇情的であるのだ。
機能的なシンプルなデザインは、
佐知子の成熟した肢体を強調して、
隆く盛り上がった胸や、
豊かな腰の肉づきを浮き立たせている。
膝丈のスカートからは、
白いタイツに包まれた形のよい足が伸びている。
キッチリと揃えらえた、
心地よい丸みの膝のあたりに、
どうにも目を吸いよせられてしまいそうになる。
ゴホン、と無意味な咳払いをして、
担任教師は佐知子と眼を合わせた。
白衣姿の美しい母親は、自分が、
実直だけが取り柄の老境の先生さえ惑わせる色香を
発散しているなどとは気づきもせず、
固い表情で語りはじめた。
「先生。親馬鹿と笑われるかもしれませんが、
 どうしても私には息子が隠れて
 喫煙をしていたなどとは思えません」
「え、ええ。それは、私も…」
「ただ、男のくせに気の弱い子で……こんなふうに、
 自分の思っていることも満足に
 主張できないところがあって」
辛辣な言葉を吐きながら、
横目で息子を見やる佐知子。
しかし、裕樹は俯いたまま、表情ひとつ変えない。
それが、ますます佐知子を苛立たせ、
以前から抱いていた懸念を吐き出させた。
「そこにつけこまれて、
 他の子からいろいろと無理を
 おしつけられているのではないかと。
 はっきり言えば、
 “イジメ”を受けているのではないかと」
「あ、いや、越野さん、それは」
イジメ、の一言に、教師は過敏な反応を示し、
裕樹もビクリと肩をこわばらせた。
佐知子は、再び裕樹へと体を向けて、
「どうなの?裕樹。あなた、
 三年のいまのクラスになってから、時々、
 傷を作って帰ってくることがあるじゃない。
 いつも、“転んだ”とか言い張ってるけど。
 あれは、
 殴られたりして出来た傷だったんじゃないの?」
「…………」
「あなた、他の子から、
 イジメられてるんじゃないの?
 この煙草も
 無理に押しつけられたものじゃないの?」
推測ではあるが、
そうに違いないという確信が佐知子にはあった。
「この機会に、
 母さんと先生の前で全部話してごらんなさい。
 あなたがちゃんと事情を打ち明ければ、先生が…」
「ま、まあ、お母さん、落ち着いてください」
言質をとられるのを恐れたものか、
慌てて口を挟む担任教師。
「……………」
しかし、懸命な母の説得にも、
裕樹は頑として口を開こうとしなかった。
……家へと向かうタクシーの中。
裕樹はチラチラと
隣に座った母の表情をうかがっていた。
佐知子は、窓の外に視線を固定して、
不機嫌な横顔をこちらに向けている。
(……まずいなぁ)
母の本気の怒りを感じとって、
裕樹はため息をつくと、
自分も車外へと目をやった。
毎日通りなれた通学路の風景が流れ過ぎていく。
学校から越野家へは徒歩で20分ほどの距離だが、
今日は佐知子の服装のことがあるので
タクシーを呼んだのだ。
夕方にしては混雑も少なく、
車は順調に家へと近づいているのだが。
帰宅してからのことを思うと、
裕樹は気が重かった。
相談室での、担任教諭との話し合いは、
あの後すぐに終わった。
結局、煙草は“たまたま拾ったもの”であり、
裕樹には何もお咎めはなし。
佐知子から追及されたイジメの件については、
そのような問題は起こっていないの一言で退けて、
担任教師は勝手に話を収拾してしまったのだ。
無論、佐知子にすれば、
まったく納得いかなかったが、
完全に逃げ腰になっている担任教師と、
押し黙り続ける息子の態度に、
矛先をおさめるしかなかったのだった。
住宅街の一隅、
ありふれた一戸建ての前に車は停まった。
先に降り立った裕樹は、その場で母を待つ。
支払いを済ませた佐知子が車を降りる時、
白衣の裾が乱れて、
ムッチリとした太腿が、
少しだけ覗いた。
佐知子は裕樹を無視するように、
低い門扉を開けて玄関へと向かっていく。
裕樹は、慌てて後を追いながら、
「運転手が、ママのこと、ジロジロ見てたね」
「…………」
「やっぱり、看護婦の格好って、
 外だと目立つんだね」
なんとか母から反応と言葉を引き出そうと、
裕樹なりに懸命だったのだが。
まあ、この場面には、
あまり良いフリとは言えなかった。
ガチャリと、差込んだ鍵を乱暴にまわして、
佐知子がふりむく。
「誰のせいだと思っているの!?」
「…っ!!」
滅多に聞かせぬ怒声に打たれて、
裕樹は息をのんで硬直し。
そして、泣きそうに顔を歪めて、うなだれた。
「………………」
しばし、佐知子はキツく睨みつけていたが。
やがて、フウと深く嘆息して。
「……いいから。入りなさい」
表情と声を和らげて、そう言った。
「…うん」
ホッと、安堵の色を見せる裕樹。
佐知子は、開けた扉を押さえて、
裕樹を中へと通しながら、
「……晩御飯の後で、ちゃんと話してもらうわよ。
 全部、隠さずにママに聞かせるのよ」
「うん」素直に、裕樹はうなずいた。
「急に、持ち物検査が始まってさ。
 押しつけられたんだ。預かっておけってさ」
夕食の後、デザートのアイスを食べながら、
裕樹はアッサリと事実を明かした。
「誰に?」
「高本ってヤツ」
名前を聞いても、
佐知子には顔も思い浮かばないが。
「どうして、断らなかったの?」
「……後が、怖いからね」
「その高本っていう子に、
 いつもイジメられているの?」
「…いつもって、わけじゃないよ。時々かな」
「どうして、それを言わなかったの? 
 さっきだって、先生に…」
「ムダだよ」
「どうして?」
「だって、宇崎の仲間なんだもん、高本って」
「ウザキ? 宇崎って…」
「宇崎達也。宇崎グループの跡取りだよ」
今度は、佐知子にもわかる名前だった。
というより、
このあたりで宇崎の名を知らないものは、
あまりいないだろう。
旧くは付近一帯の大地主であり現在は
いくつもの企業を営み、
厳然たる勢力を築いている。
現当主の弘蔵は県会議員でもあるという、
いわば“地元の名士”とかいうものの一典型なのだが、
宇崎達也は、その弘蔵のひとり息子だというのだ。
今まで、
息子のクラスにそんな生徒がいることを
知らなかった佐知子は、
急に大きくなった話に困惑した。
「…今日だって、
 もしボクが高本の名前を出してたら、
 先生困ったと思うよ」
宇崎達也と、その取り巻き連中は、
教師たちからもアンタッチャブルな
存在として扱われているのだという。
「だから、本当は煙草くらい隠す必要もないんだ。
 風紀委員だって高本の持ち物なんか
 調べようとしないんだから」
「じゃあ?」
「多分、
 ボクを困らせて笑いたかっただけじゃないかな。
 ちょっとしたキマグレでさ。
 風紀のヤツも、
 持ってたのがボクだったから取り上げたわけでさ。
 高本のモノだって知ってたら、
 見て見ぬフリをしたはずだよ」
「……………………」
やけに淡々と裕樹は語ったが。
聞く佐知子のほうは、半ば茫然とする思いだ。
「……それじゃあ、まるでギャングじゃない」
「違うよ。宇崎は王様なんだ。高本たちは家来」
「裕くん、その高本って子に、目をつけられているの?」
「特にってわけじゃないよ。時々からまれる程度。
 ボクだけでもないし。
 ……高本って、
 バカだけど体は学年一大きいんだもん」
逆にクラスでも二番目に小柄な裕樹は、悔しそうに、
「あーあ、ボクも早く背が伸びないかなあ」
「それで、
 そんな乱暴な子とやりあおうっていうの?
 ダメよ、そんなの」
「そうじゃないけどさ」
「これからは、
 なにかされたらすぐにママに教えるのよ?
 怪我をしたら、ちゃんと見せて」
「うーん……
 ママには心配かけたくなかったんだけどなあ」
「ダメよ、そんなの。
 また、裕樹が傷を作って帰ってきたら、
 今度は、ママも黙っちゃいないんだから」
「でも、高本は宇崎の…」
「相手が誰だろうと、関係ない」
決然と言い放つ佐知子の表情には、
最愛のひとり息子を守ろうとする
母親の気概と情愛が滲んで。
それを感じとった裕樹は、神妙な顔でうなずいて、
「……ありがとう。ママ」
「なに? あらたまって」
少し照れたように佐知子が笑い、
話し合いはひと段落という雰囲気になった。
「さ、お風呂入っちゃいなさい」
そう裕樹に言って、
自分は片づけのために食器を重ねて
立ち上がった佐知子は、
ふと思い出したように尋ねた。
「ねえ。その“宇崎達也”には、
 なにかされたことはないの?」
実物を知らないから、佐知子の中では、
いささか漫画的な悪役としてのイメージを結ぶ、
その名であった。
「宇崎はしないよ。
 あいつは……ボクらのことなんか、
 相手にしない」
「ふーん……」
やはり、いまひとつピンとこなかった。
……まあ、当然な反応といえた。
佐知子に未来を知る力はないわけだから。
……だが。その二時間ほど後。
自分も入浴を済ませて寝室に入った後。
鏡台に座って、
髪を梳かしていた時に響いたノックの音に対しては、
佐知子は予期するものがあったのだった。
「……ママ……いい?」
ドアを細く開けて、パジャマ姿の裕樹が訊いた。
「いいわよ」
鏡越しに許諾を与えて、佐知子はブラシを置いた。
今夜は……と、
佐知子が息子の訪れを予見していたのは、
前回からの日数と、
今日の裕樹の心理状態から推し量ったものだった。
拒むつもりもなかったから、
佐知子はローブ姿のまま、鏡に向かっていたのだ。
「……いらっしゃい」
薄明かりの中に立ち上がった佐知子は、
裕樹を手招きながら、ベッドへと向かった。
スルリと、バス・ローブが床にすべり落ちる。
白い豊満な裸身が現れ出る。
佐知子が身にまとうのは、
パール・ピンクのショーツだけだ。
タプタプと重そうにゆれる双乳に
眼を吸いつけられながら、
裕樹は手早くパジャマを脱ぎすてる。
ダブル・サイズのベッドの上に横臥して、
佐知子は息子を待つ。
ブリーフ一枚になった裕樹がベッドに上り、
母の隣に侍っていく。
佐知子は柔らかな腕をまわして、
息子の華奢な裸身を、そっと胸の中に抱き寄せる。
……そんな一連の動きに、
慣れたものを感じさせた。
この母子が禁断の関係を持つようになってから、
すでに半年が過ぎていた。
「……ママ…」
甘えた声で呼んで、裕樹が母の唇を求める。
「……ん……ふ…」
だが、口づけは軽く触れ合う程度で終わる。
舌をからませるような濃厚なキスは、
裕樹は苦手なのだった。
かわりに、
裕樹の口は、母の豊かな乳房へと移っていく。
手に余るような大きな肉果を両手で掴みしめて、
唇は真っ直ぐに頂きの尖りへと向かう。
頭をもたげたセピア色の乳首にしゃぶりついて、
チューチューと音をたてて吸う。
熟れきった柔肉をジックリ味わい
戯れる余裕もなければ、
含んだものを舌で転がすような技巧もない。
まさに乳飲み子のように無心に吸いたてる。
「……フフ…」
そんな愛撫ともいえぬ稚拙で
自儘な行為を佐知子は甘受して。
片手で優しく裕樹の髪を撫でながら、
細めた眼で見つめている。
赤ん坊に戻ったように甘えられるのは、
悪くなかった。
母親としての深い部分で
満たされるように感じるのだ。
それに、拙くても、
急所を攻められ続ければ、昂ぶりもする。
ジンワリと、身体が潤むのを感じた佐知子は、
手を伸ばして、裕樹の股間をまさぐった。
「……フフ…」
固く突っ張ったモノを、
布地越しに指先でくすぐる。
「……アッ、ア」
刺激にビクビクと背筋を震わせた裕樹が、
ようやくオッパイから口を離して
可愛らしい声をあげた。
佐知子の手が、ブリーフを引きおろす。
プルン、と。裕樹の未発達なペニスが、
それでも精一杯に自己主張して姿を現す。
そっと握りしめて。
佐知子は指で、
亀頭の半ばまで被った包皮を剥きおろす。
「ちゃんと、キレイに洗ってる?」
聞きながら、
指先でも恥垢の付着がないか確かめる。
「う、うん」
佐知子にしがみつくようにしながら、
何度も裕樹が頷いたとおり、
衛生保持の言いつけは守られているようだ。
「アッ、ア、ママッ」
だが、裕樹の幼いペニスは、
すぐに多量の先走りの汁を噴いて、
裕樹自身と佐知子の指をヌルヌルに汚していく。
手の動きを緩めた佐知子は、
頬を上気させ眼を閉じて快感に耐えている
裕樹の耳に口を寄せて囁く。
「…ママのも、脱がせて」
うなずいた裕樹の手が、
佐知子の張り出した腰へと滑る。
佐知子は、わずかに尻を浮かせて、
瀟洒な下着を引き下ろす裕樹の行為を助けた。
……今夜のように、
裕樹の訪れを予期している時でも。
いつも佐知子は、
ショーツだけは身につけるようにしている。
そして、必ず裕樹の手で脱がせる。
何故そんな手順を踏みたがるのかといえば…多分、
裕樹にも能動的であってほしいからだ。
ふたりの行為は、終始、
佐知子がリードするままに進んでいくから。
その中で、些細なことでも、
裕樹の側からの積極的な動きが欲しい。
そんな思いがあるから、
自分は下着を着けて裕樹を迎えるのだろう。
……と。
豊臀に貼りついた薄布がツルリと剥かれる瞬間に、
いつも決まって、そんな思考がよぎる。
つまり、佐知子は冷静さを残している。
醒めているわけではない。
身体は熱くなり、秘芯は潤んでいる。
だが、我を忘れる、というような昂ぶりはない。
佐知子はムッチリと官能的に肉づいた
太腿を交互にもたげて、
裕樹が引き下ろしたショーツから足を抜いた。
一糸まとわぬ姿となった爛熟の女体が、
間接照明の下に白く浮かび上がる。
まろやかな腹部に、かたちのよい臍穴と、
隆い丘の濃密な叢が艶かしい陰影を作っている。
微熱と湿り気を帯びた秘裂が晒されたのを感覚して、
佐知子は、
「……触って」 裕樹を抱き寄せながら、促す。
毎回、決まりきったパターンなのに、
いちいち求めるまで手を出そうとしない裕樹は、
従順で可愛いが、もどかしくも感じる。
「……ん…」
オズオズとした指が秘肉に触れると佐知子は
艶めいた声を洩らしてくびれ腰をしなわせた。
息子のペニスを握りしめた佐知子の手も
緩やかな動きを再開して相互愛撫のかたちとなる。
裕樹は、また母の乳房に吸いついていく。
女の部分を愛撫する手指の動きは、
いまだたどたどしくて、
佐知子の性感をくすぐるほどの効果しかない。
そして、逸る幼い欲望は、
それさえも長くは続けることが出来なかった。
「マ、ママッ、僕、もう……」
潤んだ眼で、切羽つまった声で裕樹が訴える。
佐知子はうなずいて、枕元の小物入れから、
コンドームを取り出すと、慎重な手つきで、
すぐにも爆ぜてしまいそうな裕樹のペニスに被せる。
裕樹が慌しく身を起こして、
佐知子の両肢の間に体を入れる。
「……来て、裕樹」
爛熟の肉体を開いて、美母が息子を誘う。
「ママッ」
裕樹が細い腰を進めて、
握りしめたものの先端を母の女へと押しつける。
ヌルリ、と。母と子の体がひとつになる。
「アアッ、ママ、ママッ」
「…ああ……裕樹…」
泣くように快美を告げて、
裕樹は柔らかな母の胸にしがみつく。
佐知子は、
さらに深く迎えいれようとするかのように、
ギュッと裕樹の体を抱きしめる。
佐知子の逞しいほどの太腿が、
裕樹の細腰を挟みこんで。
裕樹の青い牡の器官は、
完全に佐知子の体内に没している。
だが、肉体を繋げてしまえば、
もう母子の情事は終焉に近づいているのだった。
今夜もまた、裕樹はせわしなく腰を数回ふって、
「アッ、アアアッ」
か弱い悲鳴を上げて、
呆気なく欲望を遂げてしまう。
「……ン…」
佐知子は、目を閉じて、
その刹那の感覚を噛み締める。
そして、グッタリと脱力した裕樹を胸に抱きとめて、
荒い呼吸に波打つ背中を、なだめるように撫でた。
あまりに性急で、他愛ない行為。
しかし、佐知子に不満はない。
充分に満足を感じてもいる。
もともと、佐知子にとってはセックスとは、
そういうものだった。
裕樹の父親―死別した夫との営みも、
似たようなものであったから。
(さすがに、これよりは落ち着いたものだったが)。
元来、
自分は肉体的な欲求は薄いたちなのだろう、
と佐知子は思う。
性の営みにおいても、
求めるのは精神的な充足であるのだ。
そして、そんな自分だからこそ。
血を分けた我が子との相姦という行為にも、
さほどの抵抗もなく
入りこんでしまったのではないかと。
思い返しても、自分でも不思議なほどに、
禁忌を犯すことへの躊躇いがなかった。
きっかけは、
偶然に裕樹のオナニーの現場に
踏みこんでしまったことだった。
うろたえる息子を宥めすかして
“この子もそんな年になったのか”
という感慨を胸に沸かせた佐知子は、
ごく自然に幼いなりに欲望を
漲らせたペニスを手であやしていたのだった。
以来、そんな戯れが習慣となり、
手ではなく体で裕樹の
欲望を受け止めるようになるまで、
そう時間は要さなかった。
思春期の旺盛な欲求を抱えて
苦しむ息子を癒してやること。
それは母親としての務めであり、
代償に受け取る喜びも、
あくまでも母親としてのものだ。
だから、自分は平静なままに、
息子との秘密を持っていられるのだろうと思う。
もし、裕樹との交わりが、
肉体的な快楽をもたらすものであったら。
それを続けることに、
もっと背徳を感じてしまうのではないだろうか。
だから、これでいい。このままで、いい…。
……と、いささか迂遠な思考は、日頃、
佐知子の意識の底に沈殿しているもので。
いまは、
事後の余韻の中でボンヤリと
思い浮かべただけのこと。
しかし、このままトロトロと
夢にたゆたうわけにもいかないのだ。
佐知子は、
のしかかった裕樹の軽い体をそっと押しやって、
結合を解いた。
ニュルン、と抜け出た裕樹のペニスは、
すでに萎縮していて、
白い精を溜めたゴムが外れそうになっている。
これだから、いつまでも繋がってはいられないのだ。
起き上がった佐知子は、
枕元からティッシュを数枚とって、
裕樹の後始末をする。
仰向けに転がった裕樹は、まだ荒い息をつきながら、
母のするがままに任せていたが。
佐知子の作業が終わった頃には、
もう半ば眠りの中に沈みこんでいた。
「……もう」
呆れたように笑った佐知子だが、
今日は疲れたのだろうと理解する。
ただ、縮んでスッポリ皮を被った、
裕樹の“オチンチン”を、
チョイチョイと指先で突付いてみた。
「…うーん…」
「……フフ…」
ムズがるような声を洩らして、
モジモジと腰をよじる裕樹に、もう一度笑って。
上掛けを引き寄せて、身を横たえる。
「……ママ…?」
一瞬、眠りの中から戻った裕樹が、薄目を開く。
「いいのよ。眠りなさい」
「…うん…おやすみ…」
体をすりよせて、母の温もりに安堵した裕樹が、
本当に眠りに落ちるのを見守ってから、
佐知子も目を閉じた。
……だが、すぐには眠りはやってこなかった。
なにか……息苦しさを感じて。
佐知子は、何度か深く大きな呼吸を試みる。
最近、裕樹との行為のあとは、いつもこうだった。
その原因について、佐知子は深く考えない。
これも情事の余韻だろうと、簡単に受け止めている。
そうとしか、佐知子には考えようもない。
そして、
しばしの煩悶の末、日中の勤務の疲れによって、
佐知子はようやく眠りにつくのだった。
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