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友達の母 文恵

1.日常の風景

「行ってきます」
朝食もそこそこに、
美佳は鞄を手に取り小走りで玄関に向かった。
「あれ、今日も一人?
 悠人君と一緒じゃないの?」
文恵はエプロンで手を拭きながら、
靴を履く美佳の後ろから声を掛けた。
「知らない、、、じゃあ、行ってきます!」
一瞬睨み付けるような目を文恵に向け、
美佳は玄関から飛び出していった。
「ふぅ、、、」
文恵は玄関のカギを締め、溜息を吐いていた。
この家には美佳を妊娠した際に、
少しでも環境の良い所で育てようと
一夫と話し引っ越してきた。
都心部からは離れたが、
緑や公園が多く子育てには良い環境と思えた。
建て売りの分譲住宅は瞬く間に売れ、
隣の高橋家が引っ越してきたのも同時期だった。
お互い妊娠中であったため、
直ぐに家族同士の付き合いが始まった。
娘の美佳と、高橋家の悠人とは幼稚園、
小学校、中学校と常に一緒だった。
明るくハッキリとした美佳と対照的に、
悠人は勉強は出来たが大人しく、
悠人が喧嘩して泣かされた時は
仕返しとばかりに美佳が喧嘩相手を
泣かすこともしばしばあった。
仲の良かった二人がよそよそしく成り始めたのが、
中学校に上がって少し経ってからのことだった。
美佳の食欲が減り、笑顔が消え、
イライラを文恵にぶつけるようになった。
「年頃かな、、、」
美佳の食べ残した朝食を片付けながら、
文恵は呟いた。
「さぁて、今晩何しようかな、、、」
文恵は朝のワイドショーを横目に、
洗濯機に向かった。
洗濯、掃除、朝食の片付けが終わる頃には、
テレビから「いいとも~!」と叫ぶ声が聞こえた。
「ただいま~」
夕食の支度をしている文恵に顔を出し、
美佳が自分の部屋に上がって行く。
「お帰り、学校からの手紙は?」
「、、、、」
文恵の声は美佳に届かなかったらしく、
返事は帰って来なかった。
「もぅ、、、」
諦めたように溜息を吐き、
野菜を刻む手を動かし始めた時だった。
ピンポーン!
チャイムが鳴り、
文恵は手にした包丁を置き玄関に向かった。
「は~い、何方ですか?」
数秒の間が空き、悠人の声が聞こえた。
「あっ、、高橋です、、、美佳さんいますか?」
「悠人君?ちょっと待って、今開けるから」
文恵は下駄箱に手を掛け、
体を伸ばしながら玄関のドアを開けた。
玄関から覗いた悠人の顔が目の前に現れる。
「いらっしゃい、どうしたの?」
驚いた顔で直ぐに俯いた悠人に笑いかける。
「あ、、美佳さんいますか?」
「ちょっと待って、、美佳!
 お客さんよ!さっ、入って」
「はい、、」
文恵が体を直すのを見届け、
悠人が玄関に入ってくる。
「だれ、、?」
階段の上から、
気怠そうな美佳の声が聞こえる。
「悠人君よ、ほら上がって」
「えっ、何で?どうしたの?」
うわずった美佳の声が響き、
ドタドタと階段を降りてくる。
戸惑いながらも、
嬉しそうに笑う美佳が隣りに立った。
「あっ、いや、
 数学解らないって言ってたから、、、
 宿題一緒にと思って、、、」
「ホント!?
 どうしようかと思ってたの。
 入って入って!」
恥ずかしそうに俯く悠人に、
美佳は嬉しそうに手招きした。
「良かったわね、美佳。
 さっ、悠人君も上がって」
文恵もニコニコと笑い、
悠人を招き入れた。
「お邪魔します」
文恵の顔をチラッと一瞥し俯く悠人を、
美佳は見逃さなかった。
「ママ後で紅茶ね!」
美佳は語気を強めて、
文恵を一瞬睨み悠人の手を取り
二階に上がっていった。
「はいはい、あまり遅くならないようにね」
文恵は頬を緩めながら、キッチンに向かった。



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